平時、特に複数の変革プログラムが並行して走る際には、「経営陣のコミットメント」と「的確な方法論」に加え、企業文化を踏まえた「コミュニケーション設計」が重要になる。PMOの組成から実行に至るまで、組織の全階層を巻き込み、幅広いコンセンサスを構築できなければ成功はおぼつかない。戦時は別だ。戦略危機、収益危機、財務危機局面では、経営陣の半ば強引なリーダーシップが不可欠であり、変革の成否にひもついた「インセンティブ設計」「人的資源の手当て」「変革プロセスの明示」が計画達成度を左右する。
数多くのPMO支援経験から得た5つのTo-Do'sを共有する。
全ての変革プログラムに適合する汎用的なPMOなど存在しない。「変革の振れ幅の大きさ」「変革の緊急度」「事業及び組織構造の複雑度」。企業は、この3要素を見極め、PMOを徹底的にテーラーメイドすべし。
内外人材ミックスだけでなく、ケイパビリティミックスの観点から、業界及び機能の専門性に加え、幅広い年齢層をPMOに組み込むべし。特に、経営陣に忌憚(きたん)なく意見できる年配人材、変革プロジェクト後のオペレーションを支える次世代人材は必須だ。
PMOの仕事は施策の定義だけでなく、その実行支援にある。変革コンセプトは詳細かつ管理可能な施策群に落とし込むべし。また、実行は短距離走にあらず。3年超に及ぶ支援も珍しくないと認識すべし。
PMO組成段階で、施策の進捗度を測る5ステージを明確にすべし。すなわち、(1)施策を定義したか、(2)施策の期待効果を設定したか、(3)責任者と実行期限を明示したか、(4)施策は実行されたか、(5)施策の効果を確認したか。加えて、施策効果を、日々のプロセス指標(KPI)や財務指標にひもつけるべし。
的確なITツールは、変革プログラム推進上の強力な武器となる。機能部門や地域をまたがる変革であれば尚のこと。ExcelやPower BIなど、MS-Officeベースのツールに加え、Webベースのツールも各種存在する。情報共有、タスク整理、工数管理など、目的に応じて選定すべし。
PMO後進国といわれる日本。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)からの離陸局面が、企業における真のPMO機能定着の契機となることを期待したい。
田村誠一(Seiichi Tamura)
ローランド・ベルガー シニアパートナー
外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授