「すでによくできていることをさらによく行えるように挑戦していかなければならない。知識は、その絶えざる変化のゆえに、人は継続して学ばなければならない」
ピーター・ドラッカー
変化の激しいこの時代、さまざまなものが変化を続けている。現実に起こったことには教訓が多く、変化に対応していくには、日々その教訓を行動に反映させていかなければならない。
こんなエピソードがある。野球選手のイチローは、毎年シーズンオフに強度の高い筋トレを自身に課していた。その頃の彼は、シーズンが終盤に差し掛かる夏の終わり頃に自分の本来のパフォーマンスが戻ってくると感じていたという。ある年彼は、体を壊して強度のトレーニングができないままにシーズンを迎えた。すると、開幕直後からハイパフォーマンスを発揮できたという。そこで「強度の高い筋トレが必要なのではない、自分に適した強度の筋トレが必要なのだ」と気付き、トレーニングの強度を調整するようにしたという。彼は、現実から教訓を得て学び、新しい知見を得たのだ。
「仕事においても、現実から継続的な教訓や学びを得ることが必要です。これは会社や組織、事業内容によっても条件が変わってくるでしょうが、1日に1回15分、1週間に1回30分、1カ月に1回2時間など、あなたの組織にあった形で、知識や知見を共有してください。『今週この仕事がうまくいった。その理由はこうだと思う。さらに向上させるためにはどうすればいいか。逆に、うまくいかなかった仕事とその理由は何か、次回の対応策はどうすればいいか』こういった情報をアウトプットし、共有することで気付きを得て、変化にも対応できるようにしてください。上司は、このように部下が教訓や学びを共有できる場を継続して作ってあげましょう」(山下氏)
ドラッカーはある時、ニューヨーク大学で講義をした際、3つの質問を学生たちに提示した。そして「会社でこの3つの質問をした時に、部下の半分以上がイエスと答えてくれる組織、会社はいい組織であり、半分以下しかイエスと言ってくれない組織はいい会社とは言えない」という趣旨のことを述べた。その質問が、以下の3つである。
この講義を受けていた学生のポール・オニールは、この質問を覚えており、やがて自身が経営者になった際、部下がこの3つの質問にイエスと答えられるような経営をしようと決めた。やがて1987年にアルミニウムメーカー大手のアルコア社のCEOに就任した彼は、13年の在任期間に会社の価値を8倍まで引き上げた。
社員に敬意を払い、彼らが能力を高めるための学びを応援し、彼らが貢献してくれていることを理解することが、組織を強くしていくために必要だということが分かるだろう。
これは「ホーソン効果(Hawthorne effect)」という言葉で説明することができる。ホーソン効果とは、「人は自分に関心を持ってくれている人や自分に期待してくれている人に応えようとする」効果のことだ。
「部下に対して1人の人間として接し、関心や期待を持ってることを示してあげましょう。そうすれば、部下も期待に応えようと仕事をしてくれます。日々、上司は部下に敬意を持って接しながら、彼らが達成すべき成果を決め、主体性を発揮させるようにしましょう。これが『部下に成果をあげさせるために上司が継続すべき2つのこと』です。さらに、チーム内のメンバー同士で、日々の成果や現実からの教訓をアウトプットして明日の仕事に生かす継続学習の場を作っていけば、チームのスキルが向上していきます」(山下氏)
山下氏は部下に敬意を持って接することで、彼らも期待に応えようとしてくれるホーソン効果について語り、全3回にわたって行われた「部下に成果をあげさせる上司5つの実践」の講演を終えた。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授