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» 2011年10月05日 08時00分 公開

デジタル時代はいかにしてわれわれのマインドを変えているか海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
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脳の変化が予兆するもの

 人間の脳は機械(特にコンピューター)のように機能するという考えは新しいものではありませんが、近年、この考えはより広まっています。

 しかし、記憶量や処理スピードを示すこの比ゆは人々の誤解を招き、人間の脳の複雑さや一般知能、そして、その知能がどのように経験に反応したり感情と入り混じったりするか見落とす原因になる恐れがあります。人は、コンピューターよりも(機能的に)賢くなれるような形で自分の思考過程を考えることもできるのです。

 脳スキャンの発達により、脳のどの部位がどの活動をつかさどっているか突き止められる可能性が高まりました。しかし、今のところ科学者は人間の創造性がどのように働いているのか分かっていません。また、脳スキャンは、心を機械的に「読み取る」ことができる可能性を示唆しています。

 これは偏見、不誠実、犯罪行為などを見つける手掛かりになるかもしれません。さらに、入手が可能な個人活動に関する情報がこれまで以上に増えることと相まって、法の執行が根本的に変わる可能性があり、社会に大きな影響を与えると考えられています。

 人工知能と関連分野の興味深い発達がそこかしこで見られます。グーグルなどの検索エンジンで分かるように、ソフトウェアは基本的な問題解決がすでにできるようになっています。複数の企業が「意志決定ソフトウェア」を販売しており、事実上、脳の活動の一部を「アウトソース」しています。

 また、未来研究者であり執筆者であるレイ・カーツワイルなどの思想家の一部は、2045年までにコンピューター技術は、コンピューター自身が自分の設計を改善するほど知能を高め、それによって世界を根本から混乱させる「技術的特異点」が生まれると予測しています。

 これと同時に、カーツワイルは2050年までには、自己認識を持った機械装置に人間の脳の内容をアップロードすることが可能になり、それによってある種の「バーチャル不死3」が生み出されると考えています。これよりもはるかに控えめなレベルでは、アルツハイマー病などの病気の患者の認知機能を高める薬を健康な人間が摂取することで、知的能力を高めることができると考えられています。また、画期的なヘッドセットを付けることで、体の不自由な人は心で思うだけで機械を動かすことができるようになると言われています。

 環境によって人間の脳は柔軟に対応するように人間のテクノロジーの発達はコンピューターを人間の脳の働きにさらに近づき、やがてはそれを追い越すだけの能力を持つものが開発される可能性があることを示唆しています。確かに、検索エンジンを見ていればその検索システムはめまぐるしく進化を遂げていることが、ここ数年の間の動きを見ていてもよく分かります。

 コンピューターという外部の脳に人間の脳に存在する意思を移植するという夢物語も近い将来成り立つかもしれません。

アイディアの創造段階

 イノベーションは記憶を頼りに生まれます。新しいアイディアはめったに生まれません。それらは人の頭がすでに存在する考えを思い出し、混ぜ合わせることで生まれます。アイディア創造の中のこの「連想」の部分は通常、潜在意識の中で行われます。そしてアイディアは「準備、ふ化、啓示」の過程の中のさまざまな段階を進み創造されます。

 準備の段階では、知性を養い、幅広く徹底的に勉強して下さい。集中力は無限に続くものではありません。間違った人や場所、物に集中すればチャンスを逃すことになります。また、得た情報を整理する方法によっては間違いを犯してしまう可能性があります。

 人の脳は新しい記憶それぞれにマーカーを付け整理します。このマーカーに沿って記憶を探さなければ、欲しい情報に辿りつくことはできません。しかし、厳しく管理するよりは少し乱雑な方が創造力には良いとされています。また、創造的プロセスの一環として、慌ただしくするよりは平静でいる方が、同様に創造力をかき立てることに繋がります。

 ふ化の段階では、リラックスし自分の潜在意識を信じて下さい。この信じることには、自分の心の抑制を解き放ち、通常は散在する衝動を意識から遠ざけるバリアを低くすることが含まれます。

 このふ化あるいは「発酵」の段階の間に、人は課題や問題に反応してアイディアについて考え始めます。この段階は時間がかかります。何時間、何日、何カ月、あるいは何年もかかる場合があります。リラックスし他のことを考えましょう。待つこと以外にできることはありません。

 そして、突然、啓示がやって来ます。解決策が頭の中にぽっと浮かぶのです。それはどのくらいかは分かりませんがある一定の時間を置いた後、大抵は最も期待していない時に浮かびます。

 世界はますますスピードを速めていますが、これはアイディア創造にマイナスに作用します。独創的で価値のあるアイディアを生み出すには、良いものや悪いもの、無関係のものなど、沢山のアイディアを考える必要があります。多くの場合、新しいアイディアを考えている人は「集中的思考」、つまり、1つの正しい答えを生み出すことを目的とした論理的思考を過大評価しがちです。

 集中的思考は、「明らかに正しいか間違っているか」という観点から世界を見ます。その一方で、「発散的思考」は多角的で奇抜な解決策を生み出します。この思考は新しい問題や不明瞭な問題、あるいははっきりと表現できない問題に対し、効果を発揮します。また、時によっては、アイディアはグループの「分散知能」から生まれることがあります。なぜなら、グループは多くの場合、個人1人が持てる以上の知識を持っているからです。

 「準備、ふ化、啓示」のプロセス……人間の脳が新しいアイデアを創造する際のメカニズムを説明するには非常に分かりやすい例えです。特に現代は情報過多になっています。そこから自分にとって必要な情報をピックアップすることも、また間違った情報から軌道修正をするにも、人間の脳が試行錯誤の中から正しいものを導き、それを熟成させ、新しいアイデアを引き出すわけです。

 それこそが人間の脳の大きな特徴と言えるでしょう。

著者紹介

リチャード・ワトソンは、シナリオ立案コンサルタントです。著書に「Future Files」があります。また、What’s Nextというトレンドを紹介するウェブサイトを開設しています。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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