近づけ過ぎず、遠ざけ過ぎない距離の取り方ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2015年12月24日 08時00分 公開
[小倉広ITmedia]
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 そして縦の関係で生きている私たちは、相手や状況が変わると簡単に「私は間違っていて、相手が正しい」「私は劣っていて、相手は優れている」などのように今度は下位、劣位に自分を置いて、相手の無理難題に服従したり、傷つくことを恐れて関係性を絶つ回避行動をとってしまいがちです。

 そうではなく、対等な「横の関係」でいてはいかがでしょうか? どちらが優れているか、正しいか、などは大きな問題ではありません。どうすればよりよい未来を築けるか? その一点で対等に話すのです。

 そうは言っても、どうすれば横の関係が実現できるのかが分からない人が大半ではないでしょうか。本書はその悩みに具体的なスキルを提示しています。

 例えば、DESC法を活用すると横の関係で話やすくなるでしょう。Describe(客観的に状況描写)し、その後で、Express(主観的に気持ちを伝える)。しかし、自分の主張だけでなく相手に配慮して相手の立場にEmpathy(共感)することで関係を柔らかくし、Specify(具体的な要望)はその後で告げる。さらにはChoose(代替案)をあらかじめ提案することで押しつけ感を和らげる。

 このような伝え方をすれば、縦の関係ではなく対等な横の関係で伝えやすくなり、なおかつ、相互尊敬、相互信頼も築きやすいコミュニケーションがとれるでしょう。本書ではこのほかのスキルとしてクッション言葉の使い方や受容体(レセプター)を開かせる、アイメッセージなどのコミュニケーションスキルのほかに、縦の関係、横の関係、行為と行為者の分離、課題の分離、などの思考枠組みの変更についても伝えています。

 思想においては純血主義のアドラー心理学は、一方で手法においては柔軟に混血主義をとります。

 100年前に人間性心理学の源流として心理学会に革命を起こしたアドラー心理学の思想を学びつつ、それに適合した現代のスキルを身につける。そんな皆さんの希望にお応えすべく私は筆を執ったのです。

 私自身がかつては「押しつける」距離が近すぎるコミュニケーションばかりをとっていました。それを反省して今度は「遠慮する」「服従する」「関係を回避する」距離が遠いコミュニケーションに切り替え、そのいずれもうまくいきませんでした。

 皆さんには「近づきすぎない」「遠ざけすぎない」適切なコミュニケーションの距離感を体得していただければ幸いです。アドラー心理学は必ずや適切なヒントを与えてくれると確信しております。

著者プロフィール:小倉広

ビジネス書作家、講演家、アドラー派の心理カウンセラー。

株式会社小倉寛事務所代表取締役。一般社団法 人人間塾代表理事、一般社団法人 日本コンセンサスビルディング協会代表理事。

大学卒業後、株式会社リクルート入社。事業企画室、編集部、組織人事コンサルティング室課長など主 に企画畑で11年半を過ごす。その後ソースネクスト株式会社(現東証一部上場)常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。ベストセラーとなった『33歳からのルール』や『任せる技術』等の著作を通じて、「悩める30代」のメンター、 若手リーダーの悩みに答えるリーダーシップの専門家として知られている。 近年は、アドラー心理学と企業組織の双方を熟知した数少ない専門家として、講演、企業研修を数多く行っている。


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