「逆から考える」――限られた時間内に最大のアウトプットを出すためのヒントビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2012年08月30日 08時00分 公開
[細谷功,ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 このためには、「決められた納期に応じて仕事の精度を変える」という姿勢が必要になります。これはなかなか難しく、各人が持っている「ここまではやるべし」という仕事の要求精度は与えられた仕事の納期が1カ月でも1週間でも1日でも変えるのは困難ですが意識する必要があります。

「逆から考える」ための注意事項

 既に気づいている人も多いと思いますが、「逆から考える」ことは全ての場面において有効というわけではなく当然リスクも伴いますから、使い方や使う場面に気をつける必要があります。

 一つは、「逆から考える」というのは、いわゆる「落としどころ」を始めから想定することを意味します。これは一歩間違えば、「最初から犯人を決めつけて都合の良い証拠ばかりをでっち上げる」ことになりかねません。ですからこうした仮説思考を実践するためには、あくまでも仮説は仮説であって、情報収集や分析を進めてく上で矛盾が生じた場合には当初の仮説を柔軟に変更して対応するという姿勢と必ずセットで考える必要があります。

 もう一つの注意事項は、その「使いどころ」です。問題解決には視野を広げてさまざまな選択肢を出す「発散フェーズ」とそこから出てきた選択肢に優先順位をつけて絞り込んで行く「収束フェーズ」があります。仮説思考が有効なのは主に「収束フェーズ」の方です。始めから落としどころを想定していては広がるはずの視野も広がらず、選択肢も普段考えそうなありきたりのものしか出てこなくなってしまうからです。

 しかしながら往々にして企業における問題解決では「まずは情報収集してみよう」とか「いろいろな人に話を聞いてみよう」ということで何の仮説も持たずに発散フェーズばかりに時間をかけてしまう傾向になりがちなので、「まだまだ情報が足りない」ぐらいの段階で仮説を立ててからさらに情報を収集した方がうまくいく場合がほとんどといってよいと思います。

 ここまで解説してきた仮説思考というのは私たちの人生やキャリアプランを考える上でも応用が可能です。スポーツ選手やベンチャー経営者などがよく口にする台詞として早くから「夢を具体的に描いてそこに向かって努力する」というものがありますが、これが「逆から考える」ことのもう一つの応用ということができるでしょう。

著者プロフィール:

細谷功(ほそや いさお)

ビジネスコンサルタント。

1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経てビジネスコンサルティングの世界へ。アーンスト&ヤング、キャップジェミニなどの米仏日系コンサルティング会社での経験後、2009年より株式会社クニエのマネージングディレクター。2012年より同社コンサルティングフェロー。専門領域は、製品開発、営業、マーケティング領域を中心とした戦略策定や業務/IT改革に関するコンサルティング。併せて問題解決や思考力に関する講演やセミナーの企業や各種団体、大学等に対して多数実施。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆