海外貿易で外貨も稼ぎ、日本流は世界に通用していると多くの日本人は思っているが、日本は今でも鎖国をしていると外国の知識人はいう。今、ビジネスパーソンが心得るべきことは。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
世界的な経済誌の日本駐在員が、5年間の日本勤務を終えて先日英国に帰国した。その数日前に会う機会があり「日本人に今、欠けているものは何か?」とわたしが質問したところ、「Ambitions!(大志)」と即座に答えがあった。
「Boys, Be Ambitious!(少年よ、大志を抱け)」は、日本人なら誰もが知っている札幌農学校の初代校長クラーク博士の言葉である。しかし、これは記憶に留まっているだけで、実行することを忘れてしまっているのではないだろうか。
幕藩体制が終わり、開国し、身分制度がなくなり住居の自由も与えられ、まさにグローバリゼーションの大きな潮流に直面した。日本から多くの留学生を派遣し、海外からは技術や外国人教師を受け入れた。西欧列強に取り囲まれ国家の独立も危ういという危機感が、日本を柔軟かつ迅速に変化させたともいえる。
最近聞いた話である。日本企業が外国人も採用するので、日本人採用枠が減り就職活動は狭き門である、と。確かに、その点だけを見ればそうである。しかし、わたしが言いたいのは日本企業だけを就職先と考えず、グローバル企業で働けばいいではないか。たとえば、アップルやGEの取締役になることを目指せばよいではないか。
先のことをわたしが言うと、「言葉の壁がある」と反論がある。しかし、英語を母国語としないアジア人、ヨーロッパ人、アフリカ人が、英語を学んで世界中で働いているではないか。
海外の取引先は決して「あなたの英語は間違っています」と指摘しないと大学生のグループに説明をしたところ、大変驚いていた。海外の取引先は、われわれに「ビジネス」を求めているのであり、「言葉」を求めているのではない。だから、3人称単数現在の「S」がなくても、動詞の活用を間違えても、発音が違っていても文句は決して言わない。
中国人の英語は中国語なまりであり、韓国人は韓国語なまり、イタリア人はイタリア語なまりである。それが当たり前で、外国語を流暢に話すことなど、そもそも期待されていない。
グローバル化にはある程度の英語力が必要であるが、旧来の文法中心の勉強をしているようでは時間がいくらあっても足りない。アジアや世界の多くの国の人たちは、もっと短時間でビジネスに必要な英語を身に付けている。完璧な英語を求めるのではなく、目的をもって必要なことだけを学ぶべきである。
ビジネス英語では、宗教や哲学や恋愛論を語れる能力はまったく必要がない。英語を勉強するなら実践的でビジネスに直結するものがいいと思う。スカイプで安く勉強できるし、短期間の語学留学ならフィリピンが効率的である。
日本人にとって大切なのは、英語より、むしろ堂々と自分の意見を述べたり、自信を持ってプレゼンをすること。ここが最も世界に劣る部分であると思う。
重要なのは、異文化を理解し、国際的に通用する考え方やスキルを身に付けることであり、自分の国のことを知っていること。なぜなら、海外では外国人から日本のことも聞かれる立場になるからである。
日本人は、自分が日本人であるというしっかりとしたアイデンティフィケーションを持つべきである。カナダ人に「あなたは、アメリカ人ですか?」と聞いたら、イヤな顔をして「いいえ、わたしはカナダ人です」と答えが返って来る。「I do not want to be identified as an American.」(アメリカ人と同一視して欲しくない)と言われた経験もある。
日本人は日本人としての誇りを持っているべきであるとわたしは思う。そして、日本の歴史を学んで日本のことを語れるグローバルパーソンとなってもらいたい。グローバルに対応することと、自国や自分のアイデンティティーを持つことは表裏一体だからだ。
本書は、日本に15年以上住んでいる友人のMr. Brian Minahanとの共著である。また、Temple University Japan CampusのICAS(現代アジア研究所)やAmerica Chamber of Commerce in Japan(在日米国商工会議所)の協力を得た。
ICASはオープン講座(無料)を定期的に開催しており、ACCJもさまざまなイベントを行っている(個人でも入会可、有料)。普段グローバルな環境にいない人も、ぜひ自ら一歩前に出て、参加してはいかがだろう。英語が話せないからといって恥ずかしがる必要などさらさらない。
最後に、わたしが定期的に行っている無料読書会「世田谷ビジネス塾」を紹介させてもらいたい。本塾のテーマは、グローバリゼーション、働く女性、気づきと行動力、立志など。
株式会社多久案代表、日本駐車場開発株式会社 社外取締役
1954年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1977年三井物産入社(エネルギー本部、情報産業本部、業務本部投資総括室)。その間、ロサンゼルス、ニューヨークで通算10年間勤務。2000年株式会社ホリプロ入社、取締役執行役員。2007年株式会社リンクステーション副社長。「先人・先輩の教えを後世に順送りする」ことを信条とし、無料勉強会「世田谷ビジネス塾」を開催している。書著に「他社から引き抜かれる社員になれ」(ファーストプレス)、「バカ上司その傾向と対策」(集英社新書)、「女性が職場で損する理由」(扶桑社新書)、「仕事の大切なことは『坂の上の雲』が教えてくれた」(三笠書房)、「あたりまえだけどなかなかできない51歳からのルール」(明日香出版)、「課長のノート」(かんき出版)、他多数。古川ひろのりの公式ウエブサイト
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授