バズワードに終わらせないBeyond MaaS視点(2/2 ページ)

» 2021年04月05日 07時04分 公開
[山本和一ITmedia]
Roland Berger
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(5)移動モード・機能をつないだワンストップサービス:

 発地から着地に至るまで徒歩・バス・トラム・地下鉄など多様なモードを組合わせて移動するエンドユーザーに対して、モードの組み合わせ方も含めた経路提案・検索・予約・決済・発券といった機能をワンストップで提供し利便を実現する。

(6)サービスを移動させる:

 食事・マッサージなどのサービスをエンドユーザーの元に届ける、これは「サービスの提供」と「サービスの移動」という2つの価値の組合せであり、より高い付加価値を提供している。それにより、サービス需要を掘り起こすことにもつながる。

(7)移動する“価値ある空間”の提供:

 モビリティを単なる移動手段としてではなく、移動空間そのものに価値を加える。例えば、ビジネスの場、家族団らんの場、迫力ある音響で映画を見る場、1人になれる場、などである。特に、Lev 4自動運転を見据えた動きも活発化している。

(8)着地起点の移動需要喚起:

 移動ではなく、“目的地”を主語にした取組みである。エンドユーザーが“お出掛けしたい!”と思う魅力的な目的地を発掘・提案し、そこへの移動手段と共に提供する。それにより、移動需要そのものを喚起していく。

(9)地域の移動課題の解決・価値向上:

 交通渋滞や交通弱者対策が世界で課題となっている。地域住民の生活や移動シーンに合わせた移動手段やルートを作り、目的地とつなぐことで移動課題を解決し、同時に地域経済活性化を図る。その時、地域に既にある移動アセットを使い切る(空き稼働を使う)ことで最小限のコストで実現する。

(10)交通にかかわる社会コストの最小化:

 地域全体の移動やモビリティを俯瞰し情報を集め、需要コントロール、経路コントロール、信号コントロールを組合わせ、地域の交通流の全体最適を図る。それにより、交通安全、環境改善、渋滞緩和、インフラ負荷低減へ貢献し、地域全体に貢献する。

(11)多様な顧客接点の1つとしてエンドユーザーとの強いつながり作り:

 店舗は重要な顧客接点であった。そこに、Web、スマホ、家電、AIスピーカーなどがラインアップし、自動車も顧客接点の1つとなりつつある。移動する顧客接点として一人一人のエンドユーザーの情報をつかむと共にサービスを提供する媒体となっていく。

(12)バッテリーのライフタイムマネジメント:

 XEVの広がりは、バッテリーを主語としてビジネスを生み出す。つまり、XEVの中古バッテリーを定置型蓄電池として使っていく、そのための標準化・需給マッチングなども生じる。このような バッテリーをエコシステムと捉えたビジネスが生まれる。

(13)地域のグリッドの需給コントロール:

 XEVの広がりに加え、再生可能エネルギーの増加は、電力の需要と供給の双方のボラティリティー拡大を意味する。その時、XEVが充電・蓄電・給電することで、地域のグリッド全体の電力需給の平準化に寄与することで、エネルギーインフラの維持コスト抑制と、再生可能エネルギー普及に貢献する。

 人流を中心に13のビジネスのくくり方のパターンをあげたが、物流を主語にしたり、新興国を想定したりすると、くくり方はより増えるであろう。意味あるくくりを作るには、既存の商品や産業という切り口に捉われない発想が必要となってくる。

著者プロフィール

山本和一(Waichi Yamamoto)

慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了後、ローランド・ベルガーに参画。自動車、航空などのモビリティー分野、及び製造業を中心に、幅広クライアントにおいて、ビジョン策定、事業戦略、新規事業戦略、戦略の実行支援など、多様なプロジェクト経験を有する。また、官公庁への支援も豊富であり、多様のステークホルダーを俯瞰した日本の産業競争力の強化へも取組む。


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