アウトソーシングを変える5つのルール海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

» 2011年12月07日 08時00分 公開
[エグゼクティブブックサマリー,ITmedia]
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根本を変える大きな変化

 テクノロジー関連の最大手であるインテル社は、世界中で100以上のビジネス機能を外部委託しています。しかし、インテル社は「市場最低価格」を推し進めるポリシーを掲げたものの、受託業者にはサービスの向上に資金を使う余裕がありませんでした。そこで、イノベーションを誇るインテル社は、実費を受託業者に支払うことで受託業者の創造力を削いでいたことに気が付きました。新しい手法を必要としていたインテル社は、互恵型アウトソーシングのパートナーシップのパラダイムに興味を持ち始めました。

 ゲーム理論からヒントを得た互恵型アウトソーシングは、ゼロ和の「パイ(利益)の大きさは決められている」という敵対思考から、双方にメリットのある「より大きなパイ」という思考にアウトソーシングを変えることができます。アウトソーシング契約を結ぼうとする顧客と受託業者は、「イノベーションとサービスの向上」、「委託する企業のコスト削減」そして「受託業者の収益増加」の3つの目的を持ってアウトソーシング・パートナーシップを結びます。

 互恵型アウトソーシングは、双方の動機と測定基準、そして目的を明確にし、それに加え、設定した目標を達成した時の金銭的報酬や、達成できなかった時のペナルティを定めます。そうすることで、顧客と受託業者は両方とも恩恵を得ることができます。つまり、顧客は効率性や生産性を向上させ、それによってコスト削減を叶えることが、受託業者は定めた目標を達成することで収益を増やすことができるのです。互恵型アウトソーシングはアウトソーシングの概念を「私にはどのような利点があるのか?」という考えから、「私達にはどのような利点があるのか?」という考えに変えることができるのです。

 マイクロソフト社は、総面積約1000平方フィートの5つの敷地にある100軒のビルのファシリティー・マネジメントを、互恵型アウトソーシング契約を結ぶグラブ・アンド・エリス社に委託しています。この契約では様々な項目が定められていますが、グラブ・アンド・エリス社は、プロセス革新と生産性の向上を通じてマイクロソフト社のコストを削減する度に、その削減額の一部を得られるようになっています。これにより、マイクロソフトはより良いサービスを受け、コストを削減することができますし、グラブ・アンド・エリス社は、より高い利益を得ることができます。

 インテル社とマイクロソフト社の事例でアウトソーシングに本来あるべき姿について言及がされています。これは大変に参考になることですので是非、この方法を取り入れて見ることもよいでしょう。

互恵型アウトソーシングを実行するには、次の5つのルールを守って下さい。

互恵型アウトソーシングで順守する5つのルール

 1、取引ではなく結果を重視する

 例えば、在庫管理する量や、輸送するアイテム、あるいは技術メンテナンスにかかった時間など、取引ごとに受託業者に支払いをする契約を結ぶのではなく、顧客と受託業者が一緒に定義した最善の結果、例えば、信頼性のある測定結果やエンドユーザーの満足度、収益の向上率などに基づいて支払いをするようにしましょう。互恵型アウトソーシングでは、個々の取引ではなく求める結果に対して支払いが行われます。

 2、やり方ではなく、何をするかを重視する

 顧客は受託業者が専門家であると認めるべきであり、手順を事細かに指定してはいけません。そうすることで顧客は自分達が最も得意とすることに自由に集中することができますし、受託業者は定められた目標の達成に向け、最大限取り組むことができます。例えば、顧客企業の化粧室のメンテナンスを引き受けた受託業者は、自分達が望む方法で水道設備の問題を直して良いのです。

 3、明確に定義された、測定可能な結果に同意する

 アウトソーシング契約を結ぶ2者は、最初の段階で膨大な時間と労力を使って、責任とリスクが受託業者に行くように、目標と評価基準を最大5つまで双方で定義し、定める必要があります。

 4、コスト対サービスの取引に対する価格設定モデルを最適化する

 アウトソーシング契約では、両サイドのリスク要因とリワード要因は平等である必要があります。最終的に、アウトソーシングによって、「コストの安定した前より良いサービス」か、「前よりコストの低い前と変わらないサービス」か、あるいは、「前よりコストの低い前より良いサービス」のいずれかを得られなければなりません。

 5、支配的構造は監視するのではなく、見識を提供する

 アウトソーシングのニーズに合った適切な受託業者を選んだ後、時間とお金をかけて受託業者を細かく管理してはいけません。そうではなく、受託業者から互いのビジネスを改善する方法に関する見識のあるフィードバックを受け取るようにしましょう。

 ここに書かれている5つのルールが、従来のアウトソーシングから今後のアウトソーシングをより良くさせていくための方法です。何が大切なのか具体的にどうしなければならないのか? この5つをしっかり把握しましょう。

著者紹介

ケイト・ヴィタセクは、サプライ・チェーン・ビジョンズの創設者です。テネシー大学のエグゼクティブ教育センターで教えています。マイク・レッドヤードは、「Keeping Score: Measuring the Business Value of Logistics in the Supply Chain」の共著者です。カール・マンロッドは、ジョージア南大学で教えています。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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