このように、経営の成功を「継続的な成功」として捉えて、経営者は何をすべきか? 何を自らに問うべきか?と考えていくと、実は、ビジネスパーソンの多くが仕事で継続的に活躍するために必要なことと変わらないことに気付く。
もちろん、社長が経営という役割を与えられている以上、その役割を全うするために必要な独特な仕事や考え方もある。しかし、経営が「人が、人のために行う、人の活動」である以上、そこに関わる人である社長と社員が永続的に繁栄するために必要なエッセンスは、大して変わりないのだ。
例えば、「成長し続ける経営者の特徴」の一つとして、「第1歩が早い」ということが挙げられる。
成長し続ける社長というのは、本当に第1歩が早い。行動が早い。会話の中で「今度、その人を紹介しよう」という話がでると、その場でその人に電話をかけてくれたりすることが多い。
わたしは、社会人1年目から「お客さんは、すべて社長」という仕事をしていたから、年配の経営者との付き合いも多いが、70代に届くという大先輩の経営者から「浜ちゃん、ツイッター教えて!」などと連絡をもらうことも多い。それは多くの経営者がツイッターの存在自体を知らないような早いタイミングだった。
こういった「第1歩が早い」人たちは、やはり、行動量が多い。もちろん、その行動のベクトルによって成否は分かれるが、行動量が多いから経験値が上がる。経験値が上がると良さそうな方向性が分かってくる。つまり、ベクトルも合いだすという好循環が、どこかの時点で生まれてくる。
だから「第1歩が早い人」は成功するのだと思う。
しかし、わたしは残念ながら、そのタイプではなかった。どちらかというと、行動の前に色々と考えてしまい「第1歩が遅い」タイプだった。「それではいけない」と考え、自分にルールを課した。
それが「72時間ルール」だ。
このルールは、自分が「やるべきだ」と思ったことや「やりたい」と思ったことは「72時間以内に必ず第1歩を踏み出す」という簡単なルールだ。
第1歩は、小さな行動でも構わない。例えば「富士山に登りたい」と思ったとすると、別に72時間以内に登頂しないといけないというわけではない。富士登山にはどういうルートがあるのか調べてみるとか登ったことのある友達に電話してみるとか、何でも良いから一歩を踏み出しておくというルールだ。
そうやって第1歩を踏み出しておくと、第2歩目は出やすくなる。第2歩目が出れば第3歩目も自然に出る、そして第4歩、5歩と繋がっていき目的地に到達するようになる。
人間は忘れる生き物だ。エビングハウスの忘却曲線によると、われわれは経験したことの約8割を24時間以内に忘れてしまう。だから、行動を起こしておかないと、行動を起こすことさえ忘れてしまう。
わたしは経営者としても成長したかったから「72時間ルール」を自分に課した。しかし、もっと言えば、人生の最期に「あれもやりたかったのにやらなかった」「本当はやりたかったのに忘れていた」などということの山に埋もれて死にたくなかったのだ。
人生は短い。命とは限られた時間のことだ。だから、その人生を悔いの無いように生きようと思ったら、「第1歩が遅い」という自分を変える必要があったのだ。本書には、このような内容の「数千人の社長から学んだこと」を122項目書かせてもらった。1つでも2つでも、仕事や人生の場で実践してもらえたらと思う。
そうやって実践して自分の人生をより良い方向に変えられる人が増えたなら、わたしの目の前で「社長の仕事」に挑戦して、多くの成功と多くの失敗を残してくれた、何千人という経営者も報われるに違いない。
まずは「72時間ルール」を72時間以内に実践してみて欲しい。
株式会社ビジネスバンク代表取締役
会計事務所、経営コンサルティング会社を経て、 大好きな起業家を支援する仕事をするために20代で起業する。「日本の開業率を10%に引き上げます!」をミッションにしたビジネスバンク社は、 レンタルオフィス事業、会計事務所、ベンチャーキャピタル会社、起業家教育事業など、 起業を総合的に支援するグループ会社に成長している。数千社という起業経営の現実を見てきた「起業の専門家」でもあり、その希有な経験から昇華されたアドバイスは多くの会社を“成功と継続”へと導いている。主催する経営者の勉強会(起業家支援プログラム)は開始1年半足らずで延べ2000人以上の経営者が参加しており、「戦わない経営」「幸福追求型の経営」「小さな会社のブランド戦略」「経営の12分野」など、独自の経営論で全国のオーナー経営者から若い起業家まで幅広い層から支持されている。
著書に『戦わない経営』『仕事は味方』『誰かに話したくなる小さな会社』『My Credoマイクレド』『社長の仕事』(かんき出版)、『「心の翼」の見つけ方』(フォレスト出版)がある。
横浜国立大学教育学部卒、ニューヨーク州立大学経営学部卒。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授