最後に世間話を上手に活用している人を1人紹介します。20代中盤で会社を経営するDさんは「世間話でしか相手の本質は見抜けないと思っています。だから、あえてくだらない話題を振って反応をみています」と答えてくれました。
例えばテレビなど見ていないと思える相手に対して「AKB48で誰が好き?」と質問して「誰も知りません」と関心を示さない人、「前田なにでしたっけ? センターの女性がいいですね」と努力してついてこようとする人、「ちなみにDさんは誰が好きですか」と逆質問してくる人、その回答で「どんなタイプの人物か? 一緒に仕事をしてみたいか否か?」を見極めているようです。
ちなみにDさんは努力してついてくる人は秘書タイプ、逆に質問する人は参謀タイプとして付き合う。関心を示さない人とは二度と会わないとのこと。何気ない世間話でビジネスチャンスが変わってくることがあるのです。
また大手情報システムの社長室に勤務するSさん(52歳)は初対面の相手に対して、必ず「最近のマイブーム聞かせて」と大まかな話題で世間話を始めます。すると質問の意図を測りかねて「どのように答えたらいいのでしょうか?」と聞いてくる人もいるようです。
そんな場合は「あなたの好きに答えてください」と返されるので、結局はフリーハンドに回答するしかありません。こうした質問の仕方はオープン・クエスチョンといい「Yes」「No」で答えられるクローズド・クエスチョンに比べて答えを相手に委ねることになります。
「別にありません」、「最近はドライブが好きです」、「週末にジョギングしています」と答えた内容に続いて、「ちなみに最近はイチゴ狩りに凝っていて静岡によく行きます。静岡と言えば、鰻。ついでにおいしい鰻屋を見つけたので必ず立ち寄ります。その店の名前を教えましょうか?」といかに興味がそそられる話題を提供してくれるか? を仕事で付き合う判断材料にしているとのこと。
当然ながら「仕事で世間話は重要」と力説してくれました。このように仕事する相手を選べる立場になると世間話を「人を見極める」判断材料に使います。なので、重要性を痛感できるのかもしれません。一方で選ばれる立場にある現場のビジネスパーソンにしてみれば「現場で仕事している立場にすれば世間話より、本題で勝負したい」と思うのは分かります。
忙しい営業時代、世間話の準備をするくらいなら訪問件数を増やして業績を上げるべきと自分も考えたことがありました。いくら、世間話の重要性をうたわれても無駄なものにみえてしまうのです。なぜなら、現場の打ち合わせは世間話をせずとも仕事はまわるからです。
いきなり「では、プロジェクトの進捗確認をしましょう」と本論から突入しても問題は起きていないように思えます。だから、仕事が世間話で決まるとは信じがたいのかもしれません。でも、相手を選べる立場の人々は世間話が必要で、世間話を仕事の判断材料に加えているのは事実。なので、あなたが高いレベルで活躍したいと願うなら世間話を巧みに操れる能力を身に付けましょう。
人事戦略コンサルティング企業の株式会社セレブレインの代表取締役社長
86年リクルートに入社して6年間トップセールスに輝く。96年から独立・起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ事業部長、編集長を歴任。現在は100社以上の人事戦略コンサルティング企業代表。50冊以上の著書を出版し、累計60万部を超える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授