僕自身も経営者の端くれとして、吉田の言葉には何度も感銘を受け、背中を押されてきました。例えば「MIDDLE OF NOWHERE」。冒頭の『誰もみな同じように/時の船の上/鼻の先で過ぎる「今」は/一秒前の「未知」』という一節を読むと、不平不満が消え、謙虚な気持ちを取り戻せます。この言葉は全人類、全生物に共通するひとつの真理だと思います。また、『夢を持った者だけが/挫折を学んで/希望の歌を見つけたら/絶望をも知る』というフレーズにも、必ず感じるところがあるはず。すべての成功の裏には挫折がある。そのことを身をもって知っているリーダーの皆さんがこの歌詩を読めば、救われるような気持ちになるのではないでしょうか。
「TRUE, BABY TRUE.」における『家族の前で泣きなさい/大事な人に 大丈夫じゃないと言いなさい』という言葉にも、非常に深い思いが込められています。この「家族」とはおそらく、表面上は友達のように仲が良く、しかし、一度も本気でぶつかったことがない、いまどきの家族関係のことを指している。そのうえで吉田は、「そういう家族の前で泣いてみなさい」というメッセージを送っているわけです。もし受け入れられなかったら、すべてが終わってしまうかもしれない。家族にはそういう覚悟で向き合わないといけないのだ、と。
この歌詩もそうですが、吉田の言葉には「正論のなかにある真実」が含まれています。ビジネスのなかに「きれいごと」が存在する余地はないし、極論を言えば、利益を上げることだけがただひとつの目的です。しかし、彼女の歌詩のなかにある無償の愛、そして、正論のなかにある真実に触れることで、本当に大事なものは何か? ということを顧みることができるのではないでしょうか。この歌詩集はビジネスの実用書ではないので、直面する問題の解決にはならないかもしれない。でも、リーダーの皆さんのハートをもう一度耕し、仕事を始めたときの思いを取り戻す効果は十分にあるはずです。そのことによって、新しい発想、適切な対策が生まれ、危機を受け入れる準備も整うのだと思います。
幸いなことに僕は、吉田との仕事を通して、心を耕す機会を数多く得ています。音楽ビジネスの環境が激変し、ミュージシャン、アーティストとして生きるためには、経営もやらなくてはいけないという状況になっていますが、僕自身の根本にあるのは「吉田美和の作品を世に届けたい」という強い思いです。ビジネスとして捉えた場合、音楽は非常にリスキーだと思います。楽曲を作り、流通・販売して利益を得るというモデルは完全に終わりましたから。しかし、吉田といっしょに作った音楽をひとりでも多くの人に届けるという夢は、バンド結成当初からまったく変わってないのです。
これからビジネスの世界に飛び込んでいく若い人にもぜひ、大いに夢を見てほしいと思います。「夢を見るのではなく、具体的な目標を掲げることが大事」と言う人もいるでしょう。しかし、夢を見るというのは人間だけに許された素晴らしい能力であり、それが新しいビジネスの核を生むのではないでしょうか。
そのためにも「吉田美和歌詩集」を手に取ってみてください。ベッドの横にこの歌詩集を置いて、寝る前にページをめくり、3つ、4つくらいの言葉をピックアップする。それだけでも、心を耕し、種を撒き、大きく深呼吸できると思います。日々、難しい問題にぶつかっているビジネスパーソンの皆さんにこそ、ぜひ活用してほしいですね。
アレンジャー/プログラマー/ベーシスト。
1989年3月、アルバム「DREAMS COME TRUE」、シングル「あなたに会いたくて」でデビュー。
今年デビュー25周年を迎え、今夏リリースした最新アルバム『ATTACK25』がオリコン初登場1位を獲得。
デビュー25周年を記念した全国ツアーも開催、全国30万人を動員。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授