女性が一生働くことができる会社を実現するためには、残業をしなくてもいい仕組みをつくることも必要になる。ランクアップは、定時が9時〜18時の会社だったが、自分自身が出産して復職してみると、18時退社でも子供の迎えや家事に追われ、仕事も、子育ても、家事も中途半端になった。
そこで取り組んだのが、以下の4つのポイントである。
(1)全社員に定時退社の徹底
(2)業務の棚卸と選別
(3)業務のシステム化
(4)アウトソーシングの活用
全社員に定時退社の徹底を決めたが、多くの社員から「仕事が多くて帰れない」という意見が出た。そこで業務の棚卸と選別を実施し、システム化できる業務はシステム化を行い、さらに外部に委託できる業務はアウトソーシングを活用することにより、定時退社を実現した。
また定時退社をするためには、業務のスピード化が必要になる。そこで、以下の6つのルールを策定した。
(1)社内資料は作りこまない
(2)会議は30分以内
(3)社内メールに「お疲れさまです。」は使わない
(4)社内のスケジュールは勝手に入れる
(5)プロジェクト化
(6)社内の根回しをする
さらに残業ゼロの最終兵器として、「17時に帰っていいよ制度」を実施した。これが予想以上の効果を発揮することになった。残業ゼロを実現することで、「アフター5が充実する→新しいアイデアが浮かぶ→ヒット製品が生まれる」という成長サイクルを確立することができた。
「アフター5に新しいアイデアが浮かぶなど信じていなかった。以前、インプットした数しかアウトプットは出ないと言われたが意味が分からなかった。早く帰って映画を見ることで、会社を休んで旅行に行くことで売り上げが上がるのと思っていた。しかし現在、17時に帰っても、ブラック企業時代以上の成果を上げている」(岩崎氏)。
その理由は、"発想力"である。インプットによる新しいアイデアが、新製品を生み、業績につながっている。しかし、問題もあった。会社の業績は好調だったが、多くの社員が暗かった。そこで外部のコンサルティング会社に頼んで、企業サーベイを実施したところ、その結果は最悪なものだった。
「私自身がワンマン社長のため、会社の風通しが悪くなっていた。そこで"挑戦"という会社のゆるぎない価値観を作成し、本気で取り組んだ。さらに社員に権限を移譲し、社員の成果を承認する人事制度を導入した。こうした取り組みにより、社員にやりがいが生まれ、新しいことに挑戦する社風が醸成された」(岩崎氏)。
社員に権限を委譲したことで、海外展開をしたい、テレビショッピングで販売したい、店舗販売をしたいなど、新しい企画が社員中心に実施され、売り上げが向上するようになった。岩崎氏は、「社員には制度も必要だが、それ以上に"やりがい"が重要であるということを学んだ」と話す。
この取り組みの一環として、社員からの社内の改善提案も受け付けている。
「ウォーターサーバーを置いてほしい、無農薬野菜を支給してほしい、好きな書籍を購入したいなど、さまざまな提案がくる。提案が採用されると、1件あたり500円が支給される。却下されるものもあるが、お試しで始めてみるものもある。現在では、年間610件の提案がある」(岩崎氏)。
例えば、子どもが病気になったときのための病児ベビーシッター使い放題制度もその1つ。
岩崎氏は、「残業がなければ一生働けると思っていたが、子どもが病気になると働くことができない。そこでこの制度が生まれた。本当はパパの会社にも半分負担してほしいが、パパが休むとクビになる会社が多いのが実情。しかたないので、うちの会社が払っている(笑い)。男性も、女性も、会社から早く帰れる時代がきてほしい」と締めくくった。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授