こういう依頼を受けてまずわたしが感じるのは、「このクライアントは学び上手だな」次に、「この依頼の期待を満たし、超えることはなかなか難しいな。」ということです。経営理念も絡んでくると、当然、その会社の成り立ちから勉強しなければならないなあ、なんてことも思いつつ……。
いずれにせよ、基本能力のコア(核)がはっきりしたら、次は育成や能力開発の実践です。
ハイパフォーマーな会社の要求水準は高く「当たり前のことが大事だと再認識しました」「今まで知らなかったことを知りました」程度の内容では容赦してもらえません。
ここで期待を満たす、超える価値を提供するために、わたし(というより所属するインヴィニオという会社全員)は日々知恵を出し、冷や汗をかきながらクリエイティブなプログラムやコンテンツの創造、イノベーションに努めています。
こうしたコンテンツやプログラムの開発のポイントを突き詰めると結局、人や組織は何によって変わるのか、ということになるわけですが、一つキーワードを紹介しましょう。
それは、「認知」です。人はどのように物事を見て「しまう」、考えて「しまう」のかということです。
人はこれまでの経験などの積み重ねの影響を受けて、「自分が見たいように世界を見ていて、自分が見たいように自分を見て」います。この認知の根本に何らかの影響を与えない限り、成果や成長につながる強い気付きにはなりません。
そこでわたしが行う一つの方法が、「本人固有の事実のつきつけ」です。例えば部下育成力の研修で、「これまでどんな育成をやってきましたか?」「どんな課題を持っていますか?」と聞いてもあまり有効ではありません。さきほど述べたとおり、「自分が見ている自分」でしかないからです。
そんなことより、研修の場で育成コミュニケーションを実践してもらった方がはるかに多くの事実、課題が発見できます。例えば即興役者を部下役に見立て、その場で15分間コミュニケーションをとってもらう。これが効きます。
自分に関心の無い人はいません。しかし気持ちのバランスをとっていくためにも、見たくない自分はできれば見たくない。言い方は悪いですが、そこを突くのです。(ちなみにわたしは、ジョン・デューイという人の「大人の成長には痛みを伴う」という言葉が好きです。)
そして、部下育成についての認知を突き詰めると結局、「役割や目的の本質、価値の理解」「俯瞰」といった基本にたどり着きます。ここでコア(核)につながるのです。
認知が変われば、本来持っていたスキルが呼び覚まされます。新しいスキルが増えなくても、育成能力は高まります。
株式会社インヴィニオ エデューサー
「インヴィニオ」とは「発見する」、エデューサーは「引き出す」という意味。さまざまな業界の有力企業に対し、人材開発、組織開発に取り組んでいる。
takagi@invenio.jp
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授