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» 2012年12月27日 08時00分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:急増する管理職になれない40代 (2/2)

[前川孝雄,ITmedia]
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 しかし脅威は機会でもある。昭和のパラダイムの旧来型マネジメントが通用しなくなってきたということは、そのパラダイムでは出世できなかった人に再チャレンジの機会が生まれるということだ。人材育成や組織づくりのルールが変わったわけだから、管理職として経験を積んだ先行者とも新しいルールでのレースは、ほぼ同じスタートラインに立てるのだ。

 こんな思いから、現場で苦労を重ねる管理職と管理職予備軍のミドルの一助となればと書いたのが、『苦手な人ほど上手にできる 女性の部下の活かし方』である。親子ほどの歳の差がある女性選手たちから「ノリさん」と呼ばれ、「上から目線」ではなく「横から目線」の共感を徹底した、なでしこジャパン佐々木則夫監督に象徴されるように、女性を活かせる上司は男社会の上司とは異なる。部下一人ひとりの強みに注目し、組織の目的を達成するために、その強みがどう活かせるのかを重視する。カギとなるのは、共感と個の尊重だ。

 女性部下が上司に求めるのは自分の気持ちや事情をしっかり受け止め共感してくれること。そして組織の目的が単なるお金儲けや他者を打ち負かした成果ではなく、社会的に善いことである、意味のあることであると腹落ちし、その組織に帰属できること。そしてその善いこと、意味のあることに向かう組織の中で、わたしらしさを活かせる役割が任され、努力が上司や同僚から承認され感謝されること。帰属欲求と承認欲求をともに満たし続けることが重要なのである。これをわたしは「あなただから感」のモチベーションマネジメントと呼んでいる。

 昭和の時代の「ポスト」と「報酬」による動機づけは、いわばアメとムチのマネジメント。外発的な動機づけだった。しかし、女性が増えた平成の時代では、「組織の目的」と「個の尊重」による動機づけが求められる。出世や金のためだけではなく、心の底からその仕事に取り組みたいと一人ひとりの部下が思えるかどうかが重要だ。上司がなすべきは、内発的な動機づけとなる。これこそが新しい時代に求められるリーダーシップであり、わたしは「ダイバーシティ・リーダーシップ」と定義している。多様な従業員一人ひとりの強みを最大限に引き出す力だ。

 組織を束ねる管理職に求められる能力が、全員一律のアメとムチのマネジメントから、一人ひとりの強みを引き出すダイバーシティ・リーダーシップに変わった現代。本書では、女性の活躍を支援し育てられる組織づくりの具体的ノウハウを、「女性が喜んで働く31のルール」としてまとめている。「開口一番の否定語はNG」「1日1個、いいところを見つける」などといった初級編に始まり、「感想を加えた短い日報をメールさせる」「育児中女性の周辺をケアせよ」などといった上級編まで、概念論に終わることなく、明日から試せるような現場でのリアリティを重視した仕掛けを一挙に紹介した。

 繰り返すが、この本は女性部下のために書いた本ではない。あくまで新しい時代の人と組織づくりに苦慮する男性ミドルのための本である。女性部下の育成や活躍支援を主眼においた内容ではあるが、この先職場に増えていく高齢者や、価値観が変化する若手、外国人など多様な部下を育て活かす上司力に通ずるノウハウだ。早く始めた人ほど先行者利益を勝ち得ることができる。管理職の狭き門に閉塞感を感じているとはいえ、日本経済の活性化に強い影響力をもつのは40代。今一度初心に帰り、新時代のリーダーシップを学ぶことで、会社を元気にし、日本を元気にし、そして何より自身のキャリアのセカンドステージを充実したものにしてほしい。

著者プロフィール:前川 孝雄

FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師

多様な部下を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。早稲田大学ビジネススクール、大阪府立大学卒業。リクルートを経て、2008年株式会社FeelWorks設立。「絆」と「希望」作りによるユニークな人材育成で話題を集め、「上司力研修」「キャリアコンパス」「Feelリーダーシップ」「プロフェッショナルマインド」など独自プログラムを開発、人間味溢れる講師も育て、多くの企業で好評を得ている。現場視点でのダイバーシティマネジメント推進、リーダーシップ開発、キャリア論には定評がある。『はじめての上司道』『上司力100本ノック』『女性社員のトリセツ』『若手社員が化ける会議のしかけ』『勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい』『働く人のルール』など著書多数。


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