先ほどまでは、「現実的な意見か?」という検討は度外視して意見を出させてきましたが、ここからは、現実的で、かつ、斬新なアイデアに絞っていく段階です。
この時には、出席者に対し。「さて、みんなのおかげで沢山の意見が集まった。当たり前だが、この意見を全部実行するのは不可能だから、一番良いものに絞って、実行をしていきたい。さて、どの案がいいだろう?」と尋ねましょう。
ただし、「どの案がいいだろう?」とだけ尋ねてはいけません。なぜなら、部下たちは話し合いに夢中になりすぎるため、本当に、「何をやるか?」という議題だけで、制限時間一杯まで話し合ってしまうからです。当然ですが、会議で決めるべきことは、「何をやるか?」だけではなく、「誰がやるのか?」、「いつからやるのか?」など、たくさんの決めなければならないことがあるのです。
そこで、司会者は、「5W2H(下記の表)」をホワイトボードに書いてあげて、「“何をやるか?”以外にも、制限時間のなかで、この5W2Hを埋めてほしい」と付け加えましょう。
<5W2H>
司会者は議論に参加してはいけません。理由はふたつあります。1つ目の理由は、全体が見えなくなるからです。司会者は、会議全体の流れを読まなければいけません。例えば「議論が脱線しすぎていないか?」、「この話し合いのペースで、制限時間で結論が出るだろうか?」などを見守る必要があります。でも、司会者が議論に夢中になってしまうと、全体像が見えなくなり、時間内に結論が出せなくなるのです。戦国時代でも、(基本的には)大将は足軽と一緒になって戦いません。後方で戦況を冷静に見守り、「進撃せよ!」とか、「退却せよ!」と指示を出すのと同じです。
2つ目の理由は、司会者が自分の意見を言うと、部下は司会者(たいていは上司)の顔色を伺い、司会者と同じような意見しか出さなくなるため、斬新なアイデアは出なくなります。
ですから、司会者が発言するのは、「予算の上限」や、「目標値」など、いわば、話し合うための条件(枠組み)だけにしておき、あとは出席者に好き勝手に議論をさせるほうがいいのです。
司会者が会議の途中で意見を言いすぎると、部下が自分で考えなくとなる弊害があります。司会者(上司)からすると、部下の議論を聞いていると、「それは甘い!」、「そんなの無理だ!!」と、言いたくなるのは分かります。でも、部下たちの力を信じて見守りましょう。
部下たちは議論をしながら、自分たちの力で洗練されたアイデアに育てていくハズです。もし、そうならず、部下から、「こういう結論でいかがでしょうか?」と未熟な結論を出されたならば、そのとき初めて、「君たちが出した結論は、ここのところに見落としがある。だから、その欠点を埋めるような、より良い結論を出して欲しい」と要望すればいいのです。
会議は、売上が上がるアイデアを生む大事な時間でもありますが、部下を育てる大事な時間でもあるのです。
大学卒業後、メーカーの研究所にて勤務。 勤め先での会議は上司の思い付きで決まるため、理由が分からないままマグロ船に乗せられることになる。
虚弱体質だったこともあり、「これで人生終わった……」と、どん底に落とされた気分になるも、狭いからこそ、仲良く話し合い、一般の企業よりもはるかに高度な話し合いの技術を持っていることに感銘を受ける。それを期に、「職場を元気にする仕事をしたい!」と思うようになり、人材コンサルタントして起業。現在、マグロ船での体験を元にした研修や講演を、年間200回以上行い、会議術に関する本など、著書も多数ある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授