当たり前のことを当たり前にすること、です。
身ぎれいにする、あいさつをする、状況に合った言葉遣いをする、お酒は楽しく飲む、お金はきれいに使う――どれも社会人として「今さら何を……」という次元のことでしょう。
ところがこの「当たり前」が、実はとても難しいんですね。
例えば「きちんとあいさつができていますか?」と聞かれて、自信をもって「はい」と答えられる人が何人いるでしょうか?奥さんと口ゲンカして不機嫌なまま出勤した朝、徹夜明けで寝不足のまま出社した朝、周囲からの「おはよう」を適当に受け流していませんか?部下に仕事を手伝わせても、それが当然とばかり「ありがとう」のひと言を口にしなかったことはありませんか? あいさつもお礼もお詫びもすべて「どうも」で済ませていませんか?
人はみな聖人君子ではありません。いくら当たり前だからといって、それをすべて完璧にできるはずもありません。だからこそ当たり前のことを当たり前にする努力をする。そうあるように心掛ける。その姿勢がとても大事なのだと私は思うのです。
銀座のクラブという場で培ってきた私なりの人間観察から申し上げれば、キャリアもあって相応の役職や立場に身を置くようになった人ほど、この「当たり前」を忘れてしまいがちなものです。
さらに、新入社員ならいざ知らず、そんな年齢も経験も積み重ねたベテラン社会人に対して、正面切って「当たり前の軽視」を指摘してくれる人はそう多くはいません。
今回、僭越ながら『粋な人、無粋な人』(ぱる出版)を出版したのは、若い人たちの手本になるべき「大人の男性」にこそ、本当の「粋」の意味を知ってほしいいと思ったからでもあります。
本書では誰もが自分で気づかないまま、ないがしろにしているかもしれない、そんな「当たり前のこと」への気づきの糸口を、思いつくままにまとめました。
いつもしかめっ面をしていないか。
他人の成功を羨んだり妬んだりしていないか。
正しい敬語を使えているか。
約束の時間に遅刻ばかりしていないか。
人の話を否定ばかりしていないか。
義理ごとはきちんとしているか――。
私は企業人でもなければキャリアのあるビジネスウーマンでもありません。ですからいわゆる事務処理能力や企画力、発想力といったビジネススキルの分野から、出世できる男を見分けることはできません。
ただ確実に言えるのは、仕事がデキる人、出世する人、部下から慕われ、上司から頼りにされる人は、いつでもどこでも人に囲まれているということ。周囲の人たちのおかげで自分は存在していることを知り、自分も周囲を生かす存在であろうと心掛けているということです。
そして、人を惹きつけ信頼される魅力の根源となるのが、当たり前のことを当たり前にしようとする真摯な姿勢――「粋」であり「心意気」なのです。
毎日の何気ない「当たり前」ができているか、もう一度振り返って、自省してみる。それが「粋な人」になるための第一歩だと、私は思います。
銀座「クラブ由美」オーナーママ。東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京、クラブ「紅い花」に勤務。その後、19歳で「クラブ宮田」のナンバーワンに。さらに22歳で勝新太郎の店「クラブ 修」のママに抜擢される。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店(2013年に30周年を迎えた)。本店のほか、姉妹店としてショットバー「けんたうろす」も経営。2014年5月、「シャンパニュ騎士団」よりフランスの芸術文化勲章シュバリエをクラブママとして初叙任。
著書に『スイスイ出世する人、デキるのに不遇な人』『銀座の矜持』(ワニブックス)『粋な人、無粋な人』(ぱる出版)がある。
女優の杉本彩さんが理事長を務める【一般財団法人動物環境・福祉協会Eva(エヴァ)】の理事も務め、動物愛護活動をライフワークとする。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授