「ステップは理解できたが、どういう具合に進んで行けばいいんだ」と途方に暮れるマネジャーが多いと思います。というのは当たり前ですけれども、上記のステップに入れていく内容は自分の頭の中からひねり出すしかないのです。
これを「概念の言語化」と言いますが、逆に言えば「回答は自分の中にある」ということです。自分の中にある考えを、戦略ステップに応じて並べるのです。でもほとんどのマネジャーは、そんなことに慣れていませんし、訓練されていません。実際、何も助けが無ければ戦略など都合良く湧き出てくるものではありません。そこで使える「思考ツール」があるのです。それが「戦略カード」というものです。「戦略カード」は大きさ・厚さが市販の情報カード(「京大式カード」ともいわれます)と同じものです。
このカードを上述「5つのステップ」の最初の4つのそれぞれのステップで、「カード出し」と「カード選び」という段階を踏んで進めていきます。そのやり方のことを「シナリオ・ライティング」と言います。経営戦略とはつまり、仕事の進捗や成功に関するシナリオを紡ぎ出すことです。
さて、「戦略カードとシナリオ・ライティング」技法によってひねり出し、選び残したカードは約30枚に上ります。それらのカードは「5つのステップ」により並べられているので、全体がそのまま「3年経営戦略」を構成するのです。約30枚のカードの並びのことを「シナリオ・ツリー」といいます。
作り上げた「シナリオ・ツリー」をどうやってヒトに伝えればよいのか、つまり発表すればよいのでしょう。それには、ちゃんと「戦略発表用スライド」というテンプレート(書き込めばいいだけのパワー・ポイントのファイル)があるのです。パワー・ポイントに指定されたスライドのそれぞれに対応する「戦略カード」を転記して行きさえすれば、「発表用スライド」が完成します。
「戦略はコミュニケータブルでなければならない」ということです。上司の承認を得たり、部下に発表することによって、自部門が目指す目標や方法論、途中での課題や対処などを全て共有して貰うことにより、その戦略は初めて発動し、実践されるのです。
5つのステップで戦略を立てる方法を分かりやすく図示して解説したのが、拙著新刊『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』(山田修、ぱる出版)です。戦略の立て方の解説に加えて、実際に書き込まれたカードが豊富に例示されているので、戦略初心者でも簡単に自分の戦略を立てられます。また「戦略カード」の実物が付録になっていて、「発表用スライド」は無料ダウンロード特典を付けましたので、戦略策定がすぐに始められます。
私は現役経営者だったとき、6つの会社で社長を務めてきました。私が実際に事業の成功に使ってきたのが、この「戦略カードとシナリオ・ライティング技法」だったのです。それまで戦略立案のシステマティックな方法はありませんでした。経営コンサルタントに転じてからは、この技法によって多くの会社で経営戦略の立案を指導してきました。上場会社の社長にもこの方法で自社戦略を立てて貰っています。また経営者ブートキャンプでも長年多数の経営社や幹部を指導してきました。
マネジャーであったり、その予備軍である段階の方たちなら、今この段階でこの技法を習得されると、事業を組み立てていく能力が大きく強化されることは間違いありません。マネジャー仲間から一頭地抜け出ることができる領域、それが経営戦略策定力です。ぜひ習得することをお勧めします。
経歴:20年以上に渡り外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模に関わらず、不調業績をすべて回復させるなどして「企業再生経営者」と評される。
1949年生まれ。学習院大・修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。
著書:『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』(ぱる出版、新刊)、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)(日経新聞ビジネス書ベストセラー2位)、『あなたの会社は部長がつぶす!』フォレスト出版(アマゾンベストセラー総合1位)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』プレジデント社(同総合1位)、『MBA社長のロジカルマネジメント』講談社(同総合1位)他多数
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【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授