どうすればよいのか?日本企業のビジネスパーソンも定石を身につければ、高い現場力を生かすことで、今よりもずっと上手にビジネスができるはずだ。
しかしここで問題がある。世の中の多くのマーケティングやビジネス戦略に関する本は、良書が多い反面、正しい情報を正確に伝えようとするあまり、現場のビジネスパーソンにとって敷居が高いのだ。実際、ビジネス戦略本を敬遠して読まないビジネスパーソンはとても多い。しかしそのような人たちこそ、いまの仕事ですぐに役立てることができる「戦略の定石」を必要としている。ただし、戦略の詳細な方法論は不要だ。「要は、こういうこと」というエッセンスが分かれば、あとは自分の経験に照らし合わせて消化できるのだ。
どのようにこれを伝えるか?私が試行錯誤し辿り着いた結果が、『100円のコーラを1000円で売る方法』で確立した「ビジネスエンターテイメント小説」のスタイルだ。 2011年から2013年にかけて上梓した『100円のコーラを1000円で売る方法』では、会計ソフトウェア業界を舞台にして、「顧客中心主義」、「競争戦略」、「イノベーション」といったテーマをそれぞれ3巻で学ぶストーリーに仕上げた。おかげさまで、ビジネス書を読んだことがない人たちからも、「いまの自分たちの仕事でとても役立つ」という多くの言葉をもらった一方で、熟練の経営者からも「自分が長年の仕事を通じて学んだエッセンスが、分かりやすい言葉にまとまっている。部下に読ませたい」との評価を得た。
新刊となる『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』では身近にあるコーヒー業界の事例をもとに、下記目次のとおり最新ビジネス戦略を学べるようになっている。
では、本書は何が新しいのか?
2011年に上梓した『100円のコーラを1000円で売る方法』のテーマは顧客中心主義だった。顧客の言いなりにならず、顧客が本当に必要とする価値を創造する大切さ、特にバリュープロポジションの考え方を紹介した。バリュープロポジションについて知らない人も多く、その後さまざまな講演や研修を行った。一方で、昨年の2013年頃から、「バリュープロポジションの大切さは分かった。では具体的にどうすればいいのか?」という質問が増えてきた。日本の企業は、着実に進化しているのだ。
そこで本書では、バリュープロポジションの作り方を具体的にご紹介している。バリュープロポジションを作るには、「顧客の課題」と「自社の強み」の2つを考え抜く必要がある。しかし「顧客中心主義だから、顧客の課題をまず検討しよう」と考えると、顧客の言いなりになってしまい差別化できない。最初に考えるべきは「自社の強み」、言い換えれば「自社らしさ」だ。
本書ではバリュープロポジションを具体的に考えるフレームワークを提供している。「自社ならではの価値」を創り上げるための方法論だ。これは数多くのクライアントとのワークショップを通じて検証し、チューンアップしてきたものだ。具体的には、下記の4つについて、お互いに連携させた形で、具体的に考える。
(1)自社ならではの強みは何か?
(2)その強みを必要とするお客様は誰か?
(3)そのお客様は何を必要としているか?
(4)お客様が自社を選ぶためには、どうすればいいか?
一見、簡単だ。しかし実際には、これを作り上げるのはとても難しい。実際に多くの企業で、このフレームワークに沿ってバリュープロポジションを作り上げるのにとても苦労している。本書では、主人公がこのフレームワークに挑戦して悩みながら学んでいく様子も描かれている。実際には、優れた業績を上げている現代の企業は、この枠組みに沿って価値を創り上げているのだ。本書では実在する企業を例に、いかにこのフレームワークでバリュープロポジションを作り上げて成果を生みだしてるかも紹介している。
アベノミクスのおかげで日本経済にやや明るさが見えてきた。いま、多くの企業が新たな価値創造に挑戦している。本書がその一助となることを願っている。
オフィス永井代表。1984年に慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。
IBM大和研究所の製品プランナーとして企画した製品がバブル崩壊で大苦戦するも、プロモーションの傍らで全国を駆け回りセールス活動を展開、さらに製品開発マネージャーも兼任し3年間で多くの大規模プロジェクトを獲得する。98年よりマーケティングマネージャーとしてCRMソリューションの戦略策定・実施を担当し、市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献。同社ソフトウェア事業で事業戦略担当後、人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を通じて事業の成長を支える。
2013年に30年間勤務した日本アイ・ビー・エムを退職。オフィス永井を設立し、ビジネスパーソンの成長支援を通して日本企業がより強くなることを目指し、マーケティング・戦略などの講演・研修を提供している。
主な著書に、シリーズ50万部となった『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版)、『残業 3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上、KADOKAWA中経出版)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)などがある。最新著書は、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』(KADOKAWA中経出版)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授