実は、顧客満足は、お客さまの事前期待と非常に密接な関係にあります。(図2)モノやサービスにその実体以上の「過大な事前期待」を持った場合には、どのような結果が待っているでしょうか? その実体を知った途端、期待は落胆に変わり、お客さまを失うことになります。
逆にあまり期待していない場合にはどうなるでしょうか。言ってみれば「小さな事前期待(過小な事前期待)」しか持っていなかった場合は、その結果に驚き、大きく顧客満足が上昇し、リピート客化します。また、事前期待と実際の内容に大きな違いがない場合には、お客さまの印象にはあまり残らず、ライバルがいなければ取引は継続することになります。
顧客満足には絶対値は存在せず、常に事前期待と実績評価の相対関係で決まるのです。
では、事前期待をマネジメントすることは可能でしょうか? 答えは、イエスです。例えば、「過大な事前期待」を持ったお客さまに対するマネジメントは、妥当な事前期待にするために冷やす必要があります。このためには本音のコミュニケ−ションや契約内容の確認、当初の要求内容の確認をすることで適正な水準に戻すことができます。
また、「小さな事前期待(過小な事前期待)」しか持っていないお客さまに対しては、対象となる商品やサービスの魅力を伝えるための施策が必要となります。この場合、他社との優位点や自社の商品やサービスの魅力を客観的に伝える施策が有効的です。
お客さまは誰でも、自分のことを考えてくれていることが分かるとうれしくなりますし、その企業やお店に対して愛着やロイヤルティが湧くものです。つまり、事前期待を適切に把握し、マネジメントすることで多くのお客さまを自社のファン、場合によっては応援団にすることができるのです。
特にソーシャルメディアをうまく活用することで、従来の対面のビジネスにはないキメ細やかな対応が可能になると考えています。この「ソーシャルメディア×事前期待のマネジメント」の活用は、企業がこれから取り組むべき戦略になるでしょう。
1964年東京都生まれ。1987年立教大学 文学部 心理学科(産業心理、消費者心理)卒業。1987年富士通株式会社に入社。国際ディジタルネットワークビジネス、テレカンファレンスビジネス、CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)など数々の新規ソリューションビジネスの立上げに従事。CRMビジネスでの経験を踏まえ、2009年頃からサービスサイエンスの研究と検証を実践中。現在、同社のシステムインテグレーション部門戦略企画室にてコミュニケーション創発サイト「あしたのコミュニティーラボ」を立ち上げ、オープンイノベーションを実践中。(社)情報処理学会、(社)日本情報システム・ユーザー協会等、大学等での講演および論文掲載多数。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授