寿命100歳(以上)海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)

» 2012年08月08日 08時00分 公開
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家族関係

 今、平均的な女性が妊娠できなくなる年齢はおよそ50歳です。人の寿命が延びることで子どもを産む能力が高まれば、人生は変わります。体外受精などの不妊治療技術はすでに、子どもに恵まれない夫婦が妊娠する手助けをしています。最近の研究では、高齢の男性の精子の子孫は高齢でない男性の精子と比べて、不健康になることが分かりましたが、2009年、イギリスの科学者たちは幹細胞を人間の精子細胞に転換することに成功しました。これにより、生殖が自然に制限されることは無くなりました。将来、70歳の女性と90歳の男性の間に子どもが生まれるということが起こるかもしれません。

 女性が高齢になっても子どもが産めるようになれば、兄弟姉妹の年齢差はかなり大きくなるでしょう。その年齢差は、2歳、20歳、あるいは50歳や70歳になる可能性があります。このように年齢にバラツキがあると、家族が共有する経験や思い出に影響が出て来ます。兄や姉が50年前に楽しんだ出来事を、弟や妹は理解することができないでしょう。また、生涯持つ子どもの数も変化する可能性があります。長生きするため、子孫を全く持たないことを選択する人が沢山出て来るかもしれません。

 生態学者は、環境が安定すると、人が産む子供の数は減ることを発見しました。また、寿命が非常に長くなれば、20代、30代、40代に子どもを産まなければならないと焦りを感じることも少なくなるかもしれません。さらに、青年期と成人期の間も長くなります。2002年に発売されたニューズウィーク誌では、この2つの時期の間の段階を「Adultolescence(アダルトレセンス:成人期のAdulthoodと青年期のAdolescenceを組み合わせた造語)」と呼びました。

 寿命が延びることで、人類の生態系にもあらゆる影響を起こす可能性について書かれています。選択肢が広がる中、命の価値観は、どのようなものへと変わりつつあるのか大変興味深いところです。

結婚は永遠のもの――では、永遠とはどのくらいの長さか?

 現在、男性が結婚する年齢の平均は28歳で、女性は26歳です。しかし、もし自分が長生きすることを知っていれば、結婚を先延ばしにするかもしれません。

そして、自分の心が本当に求めるものを探すことに、もっと時間をかけるようになるでしょう。結婚する年齢が遅くなれば、離婚率は下がるはずです。

 離婚する人の多くは、20代で離婚します。結婚する時期が遅いと、結婚生活は長続きする傾向にあります。また、仮に150歳まで生きるとしたら、夫婦間の年齢差は最大で80歳や90歳になる可能性もあります。さらに、恋人と付き合う回数や結婚の回数も増えるでしょう。中には、長い期間独身を楽しんでから、結婚しようとする人も出てくるでしょう。

 寿命が延びると一つ一つの価値観が変わってくるということです。勿論、結婚についても人生観に大きな影響をもたらすと言うことが書かれています。

持ち時間はどのくらい?

 長生きするということは、使う時間が増えるということです。1965年の平均的な人の通常の生涯における持ち時間は、408,800時間だと言われていました。

もし150歳まで生きるとしたら、持ち時間は876,000時間になります。このように持ち時間が増加すれば、時間に対する価値観や感じ方は変わるでしょう。同様に、人生で起きる出来事が与える影響力も変わります。どれだけ衝撃的なことが起こっても、その1つの出来事で人生全体が変わってしまうことなどなくなるため、感じるストレスは少なくなるでしょう。

 長生きするということは、ストレスの軽減になるということです。つまり増加された時間がストレスを緩和してくれるということだと言えるようです。

健康と富

 より健康でより長生きするようになれば、より大きな富を享受することができるかもしれません。例えば、1970年から2000年の間にアメリカの国富は年間およそ3.2兆ドルずつ増加しましたが、これは寿命が延びたことが理由です。寿命が延びれば、勉強するための時間や、場合によっては複数のキャリアで成功するための時間がさらに長くなります。

 ただし、高齢の従業員は、ますます年の差が開いて行く若い従業員と一緒に仕事をする新しい方法を学ぶ必要性が出てきます。朗報は、年を取ればそれだけ忍耐強くなるということです。また、若い従業員は、自分の上に居る人達が誰も引退しないのであれば、どうやって出世階段を上って行けばいいのか不安になるでしょう。しかし、若さとそのエネルギーはいつでも重要視されます。新しいテクノロジーに大きく依存している常に変わり続ける世界の中で、賢く若い人材を避ける企業はどのような企業であれ、競争力を失ってしまうでしょう。

 健康であるが故に長寿を手にすることができます。

そして健康であれば、ますます人生がポジティブなものとなるでしょう。精神や肉体が長い寿命を通じて確実に富や財を手に入れることの事例について述べられています。また、そのような環境下で企業が留意することとして排他的な組織構図はマイナスの因子であるということがわかりました。

著者紹介

ソニア・アリソンは、ベストセラー作家であり、シンギュラリティ大学の創設者です。ロサンゼルスタイムズ紙、ニューヨークタイムズ紙、ウォールストリートジャーナル紙、USAトゥデイ紙に寄稿したことがあります。


プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長

鬼塚俊宏氏

経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。


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