ドラッカー教授の言葉を実践する。一言を実践する。ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

» 2013年05月30日 08時00分 公開
[佐藤 等,ITmedia]
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一言を実践する

 同社の利益が倍増したその背景に何があったのでしょうか。利益を追い求めていた時には、利益の伸びがおもわしくなく、顧客を創造することこそが、事業の真の目的であることを理解したとたんに利益が倍増したのは当然といえば当然です。

 顧客の創造とは、顧客価値の創造、顧客の支持の創造に他なりません。それは単に顧客数を増やすというだけの意味ではありません、例えば顧客の顧客を創造すれば値引きされにくい状況が生まれます。強い利益体質の事業体が生まれます。

 同社は出合った一言を徹底実践しています。ドラッカー教授の言葉は、一言でも利益を倍増させる力があることを是非理解してほしいと思います。ドラッカー教授の体系を学んで使うという姿勢も大切ですが、一言を実践し尽くすことがより重要です。

ドラッカー教授の言葉の力の源泉

 北海道健誠社ばかりでなく、昨年7月5日にこの連載に掲載した――42年ぶりに顧客が増えた「十勝バス物語」は、その後も成果をあげ続けています。なぜこのようなことが起こったのでしょうか。

 第1の理由は、高い実践性にあります。いくら素晴らしい本を読んでも、セミナーに出ても実践に移すかどうかが決め手になります。第2の理由は、安易なハウツーに頼らないことです。ドラッカー教授の著書には、多くの原理が書かれています。例えば「事業の目的は顧客の創造である」。これは原理です。その証拠に明日の朝から具体的に実行に移すことができません。

 ドラッカー教授は、安易に方法に飛びつくことを戒めます。答えを得ようとするな、正しい問いを使いこなせと言います。例えば、顧客の創造のために欠かせない問いは「顧客にとっての価値は何か」です。

間違って原理を用いない

 原理を使いこなすことは難しいといわれていますが、その効果は決定的です。例えば目的を違えて事業を行っていれば、到達点は当然異なります。また原理は、一時に身に付けてしまえば、長くその力を発揮します。

 『実践するドラッカー 利益とは何か』では「利益の原理」ともいうべきものに関して世の中にある誤解を5つ明らかにしました。正しい理解の先に利益があります。

  • 第1の誤解:利益は汚いものである
  • 第2の誤解:利益は企業の目的である
  • 第3の誤解:利益は実体のある余剰である
  • 第4の誤解:必要な利益は目標利益よりも低い
  • 第5の誤解:利益はコストの流れと関係がある

 今回掲載の瀧野専務の誤解は、上記第2の誤解に関するものでした。意外と誤解されている利益。筆者は職業会計人として25年過ごしてきましたが、「会計における利益」を超えて「マネジメントにおける利益」を発見したドラッカー教授に出会って驚愕しました。マネジメントの道具としてどのように活用すべきか。人類が生み出した利益という道具を活用することを実践していきたいと思います。

著者プロフィール:佐藤 等

公認会計士/佐藤等公認会計士事務所 所長

1961年函館市生まれ。ドラッカー学会理事。小樽商科大学大学院商学研究科修士課程修了。佐藤等公認会計士事務所所長。株式会社ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役副社長。

ナレッジプラザのアドバイザーで佐藤等公認会計士事務所所長。会計士として20年経営をする傍ら、ピーター・F・ドラッカーを研究し「実践するドラッカー」シリーズの編著を手がけたドラッカー研究の第一人者。ドラッカー学会理事も務める。自らドラッカーのマネジメント手法を実践できるノウハウとして体系化し、解りやすく指導し多数の経営者を開眼させている。創業期のベンチャーから、公開企業に至るまで様々なステージの企業と、財務の視点に関わらず広い視点から「共に考え行動(※)」している。(※事務所の経営理念で謳われている言葉)

著作

『実践するドラッカー[思考編]』(ダイヤモンド社)

『実践するドラッカー[行動編]』(ダイヤモンド社)

『実践するドラッカー[チーム編]』(ダイヤモンド社)

『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)

『実践するドラッカー[利益とは何か]』(ダイヤモンド社)


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