例えば、LED電球の「機能」面での競争相手は「電球型蛍光灯」になります。白熱灯電球と比較すれば8割の省エネ効果があり、LED電球の9割と比較しても、機能面での差はわずか、しかし価格は倍ちかくの差があります。LED電球を販売する事業者にとって、電球型蛍光灯は見えやすく分かりやすい競争相手です。
しかし「目的」に焦点を当てると、もっと別の競争相手が登場します。自然採光のユニット商品です。自然光を外部から取り入れるから省エネどころかランニングコストはゼロです。顧客から見れば「安く明るくしたい」という目的を達成できればよいので、当然ながら、これも競合に入ります。
何をもって顧客の理想の姿 ――つまり目的を達成するのか。そして、誰と競争しているのか。この意識を明確にすることで、「どのような顧客(市場)に対して、事業展開をすれば、わが社は勝てるのか」が、必然的に決まってくるのです。
勝てる市場が定まったら、実際に攻め込むステージに移行します。そのための具体策として、私はインパクトユーザーの獲得にまずは注力してください……と提唱しています。インパクトユーザーとは「狙った市場」において「あの人(会社)が買ったのなら、私も欲しい」と連鎖反応が起きるような影響力の強い顧客を言います。
購買心理の世界では、これを社会的証明の原理と呼ぶのですが、いわゆる行列に並ぶような心理状態を作り出す事に注力していくのです。「そんな事ができれば、世話ないよ……」という方が多くいますが、これにはあるテクニックが存在します。狙った顧客を高確率で口説き落とす「高確率セールス手法」です。これは市場を絞りきるからこそデキる営業手法で、大きく分けると2つのポイントをおさえることがキモとなります。
1つ目は、大義名分。われわれは社会をこのように変えていきたいからこそ、このような商品を販売している……。そういった大義があると、人は「NO」とは言いにくいのです。2つ目は、4項目情報収集法。これは、顧客の(1)理想の姿 を調べ上げ、(2)現状とのギャップから生まれる、(3)課題 を浮き彫りにして、(4)購入阻害要因 を一つずつ取り除くことで、鋭い提案をしていく技術です。
具体例は紙面の関係上割愛しますが、まず、相手が受け取る利益を明確にし、我々は、その利益提供に全身全霊で立ち向かっていることを相手に伝えることで、相手を動かすことができるようになるのです。
インパクトユーザーを無事に獲得できたら、その実績を武器に拡販体制に移行していきます。「どのような理想を実現するためにインパクトユーザーは、その商品を購入したのか」「購入する前の状態は」「どのように課題は解決されたのか」「購入前にはどのような阻害要因があり、どう克服したのか」。そう、前述した4項目情報収集法にそって、取材を行い「事例PR記事」にまとめるのです。
これを営業マンのセールスツール、ホームページ、カタログに展開することで、同じ課題を抱えた買い手を芋づる式に開拓していく事が実現できるようになるのです。自社商品の価値を決めるのは「製造現場」だけではありません。どのような顧客と取引しているのかで決定されるのです。
私は、これらの一連の手順を「波及営業」戦略と名づけました。
この「狙う」「決める」「拡げる」の3つの戦略を体系立てたものを「波及営業」と言います。
営業マンに売上を依存できる時代は終わりました。ぜひ営業戦略の設計をしっかりと描き、着実に事業を成功に導いていってください。
誰が諦めた商品を「売れる!」に変えてきた営業戦略設計師。
鶏卵販売、呉服、住宅建材などの身近な商品から、無線機器や半導体の評価装置メーカーなどの特殊商品まで、あらゆる業界で結果を残している実戦派の営業戦略コンサルタント。
一部上場企業を顧問先に持つ、新商品開発コンサルタント会社に弟子入りし、その後ITベンチャーでトップセールスとして活動してきた実務経験が、クライアント企業の課題解決の下支えをしている。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授