ここまで読まれた方は、結局これはいまも一部の職種で存在している「フリーランス」の働き方と同じと思われたかも知れません。それは半分は正しい理解ですが、残りの半分は異なります。Go it alone起業というのは事業内容そのもの、つまり新しい付加価値そのものを生み出すということがそれに加わるのです。事業や労働に関して、howのレベルで「個人で」行きていくのがフリーランスだとすれば、howに加えてwhatも個人や少人数でやってしまおうというのがGo it alone起業のスタイルです。
これは具体的にどういう影響があるかと言えば、フリーランスというのは基本的に大元のニーズや仕事は誰か(発注主)が生み出した上でそれを受けるというスタイルですから、いわば「仕事の電話(メール)を待っている」という形になりますから、基本的には受身で、好不況の波を自らコントロールすることが非常に難しくなります。
これに対してGo it alone起業はあくまでも事業そのものを自らの強みで創出していくという形ですので、より能動的になり、不況にも強く、そうした折りにも自ら動くことができます。
そして、Go it alone起業の最後の3番目の特徴が、小さいからといって目標も小さいわけではないということです。自らの強みを徹底的に追求してそれを磨く一方で、他の機能は徹底的に外部にアウトソースすることで、外部の専門家の能力を活用してビジネスにレバレッジをかけて(「てこの原理」で大きくして)、自分たちだけでは実現できないレベルの質と量の仕事を実現するというのが目指す姿であるところが、単なる個人事業や上記のフリーランスとの違いということになります。
こうした考え方は大企業の世界でも生産委託や販売委託といった水平分業モデルや、製品開発を他社とのコラボレーションで実施するオープンイノベーションの考え方と基本的に同一と考えられます。その考え方が「個人」にも適用可能だと考えれば、このような動きも十分に理解できます。
創造性や生きがいのための新しい働き方や組織のあり方が求められている時代に、"Go it alone起業"は一考すべきビジネスのあり方と言えるでしょう。
ビジネスコンサルタント。
1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にてコンサルティングに従事。専門領域は、製品開発や営業等の戦略策定や業務/IT改革。併せて問題解決や思考力に関する講演やセミナーの企業や各種団体、大学等に対して国内外で多数実施。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)等。最新刊は『会社の老化は止められない?未来を開くための組織不可逆論』(亜紀書房)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授