それではこうした老化現象にはどう対応すればよいのでしょうか?
ここまで述べてきたように、根本的に会社の老化は不可避のものであり、必ずどの会社にもこうした症状は遅かれ早かれ必ず現れます。これは全く人間の老化と同じです、ただし、「アンチエイジング」によって老化を遅らせることは可能であることも人間と同じです。ここではそのための対策を3つ挙げておきます。
1つ目は、「老化は不可避である」ことを認識した上で日々の業務に取り組むことです。まずは冒頭挙げたような症状は必ず進行していくことを自覚しておくことです。会社の不可逆性を意識することで、ルールを増やすときには慎重になり、減らすのは大胆に実施し、「生活習慣」を変えることで、日々の業務レベルでのアンチエイジングを図ることができます。
2つ目は、組織を根本的に若返らせることは不可能なので、全体としての若返りを図るためは、新しい組織を立ち上げて、古い組織を置き換えていくアプローチが有効です。人間の世代交代を考えれば明快ですが、「古い世代」を根本的に若返らせようというのは長い目で見ると時間の無駄です。全く新しい「子供」を生んで育てることでしか世代交代はできないのです。古い組織で新しいことをやろうとしても「薄まって」しまい、いつの間にか効果がなくなってしまいます。
不可逆性に逆らうのではなく、リセットすることが基本的な対策としては有効になるでしょう。
3つ目は、会社の中で眠っているイノベーターを活用することです。ここでいうイノベーターとは起業家精神家を持って新しい取り組みに積極的な、老化の進む組織には必須の人種です。ところが実際にはイノベーターというのは、「常識」という名の負債にこだわらないためにアンチエイジングには必須の存在であるにも関わらず、往々にして伝統的な組織では異端視され、活用されるどころか迫害されている場合がほとんどです。組織を本当に若いまま保ちたいのであれば、多少の軋轢が起こってもこうした異端児を活用することが必須になります。
居心地の良いことばかりをしていれば老化は進行するというのは個人と同じように組織にもあてはまるのではないでしょうか。
老化のメカニズムを理解した上でうまくつきあう必要があるのは組織も人間と全く同じということが言えるでしょう。皆さんの会社は宿命的な老化とうまくつきあえているでしょうか?
ビジネスコンサルタント。
1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にてコンサルティングに従事。専門領域は、製品開発や営業等の戦略策定や業務/IT改革。併せて問題解決や思考力に関する講演やセミナーの企業や各種団体、大学等に対して国内外で多数実施。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)等。最新刊は『会社の老化は止められない?未来を開くための組織不可逆論』(亜紀書房)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授